超臨界技術Super Critical Technology

超臨界流体とは?

物質の三態と超臨界状態

物質は、温度と圧力によって気体、液体、固体などの状態(相状態:物質の三態)で存在します。

例えば、1気圧(大気圧)の“水”を考えると、水は氷点下では「氷(固体)として存在していますが、0℃で溶けて「氷(固体)→水(液体)」となり、さらに温度を上げると、100℃で蒸発して「水(液体)→水蒸気(気体)」となります。

1気圧では、100℃で液体の水と気体の水蒸気が共存しますが、さらに圧力と温度が高くなると上限に達し(臨界点)、この臨界点を超えると液体と気体の両方の性質を兼ね備えた、「超臨界流体」といわれる状態になります。

物質の三態
超臨界流体

超臨界流体の特性

超臨界流体の特性を整理すると以下のように特徴づけられます。

流体の物性比較

物性 気体 超臨界流体 液体
密度(kg/m3) 0.6~2.0 300~900 700~1600
拡散係数
(10-9m2/sec)
1000~4000 20~700 0.2~2.0
粘度(10-5Pa・sec) 1~3 1~9 200~300
熱伝導度
(10-3W/m・K)
1 1~100 100
動粘度(10-7m2/sec) 100 1~10 10

参考文献:福里隆一・後藤元信,実用超臨界流体技術,分離技術会3(2012)

汎用的な超臨界流体

臨界点はすべての物質に存在します。産業的には二酸化炭素および、この中間的性質を持つメタノールが利用されていますが、特に、水と二酸化炭素は自然界に存在する物質であることから、環境に優しい溶媒(グリーン溶媒)として知られています。

超臨界二酸化炭素は、低極性であり、抽出や微粒子化などの溶媒としての利用が一般的です。一方、超臨界水は反応性が高く、有機物質の分解や有害物質の無害化に使用されます。

物質の臨界物性

物質名 分子量 臨界温度 臨界圧力 臨界密度
(g/mol) (K) (℃) (MPa) (atm) (g/cm3)
二酸化炭素 44.0 304.1 31.0 7.28 72.8 0.469
18.0 647.3 374.2 22.12 218.3 0.348
メタン 16.0 190.6 -82.6 4.60 45.4 0.162
エタン 30.1 305.4 32.3 4.87 48.1 0.203
プロパン 44.1 369.8 96.7 4.25 41.9 0.217
メタノール 32.0 512.6 239.5 8.09 79.8 0.272
エタノール 46.1 513.9 240.8 6.14 60.6 0.276

参考文献:wikipedia,超臨界流体

超臨界状態の二酸化炭素、メタノール、水の特性比較

参考文献:福里隆一・後藤元信,実用超臨界流体技術,分離技術会5(2012)

超臨界二酸化炭素

二酸化炭素の場合、通常は気体として存在しますが、固体状態はドライアイスとして、液体状態では液化炭酸ガスとして利用されています。

二酸化炭素の臨界温度および臨界圧力はそれぞれ、31.0℃および7.28 MPaであり、これを超えた温度、圧力領域にある二酸化炭素を、一般に超臨界二酸化炭素と呼んでいます。

超臨界二酸化炭素は、以下のような特徴があります。

臨界温度が31℃であり、低温での処理が可能
熱変性・熱劣化を起こさない
不活性な物質
原料成分と反応することがない(変性させない)
無味無臭で無害
食品や飲料の風味を変化させない、人体に影響を及ぼさない
無極性に近く、ヘキサンなどの有機溶媒に似た性質
代替溶媒として利用できる
通常状態では気体であるため、分離が容易
後工程での有機溶媒の分離工程や廃棄処理が不要
表面張力がほとんどゼロ
細胞の様な微細構造にも容易に入り込み、目的成分を溶解することができる

この様な特性から、分離・抽出や微粒子化などの溶媒として様々な分野で幅広く活用されています。

超臨界二酸化炭素の利用、超臨界水の利用、共に工業化レベルに達しているものは多くあります。その中でも超臨界二酸化炭素を利用した抽出については、歴史もあり、すでに製品として市場から良好な評価を得ています。

当社はこの抽出技術に着目し、特に、これまでより高圧での抽出を行うことにより、従来にない製品、並びにコスト・品質面で従来以上に優れた製品を提供し、超臨界技術利用製品をさらに普及させることを目標としています。

抽出技術・適用例紹介

超臨界二酸化炭素を活用した抽出技術は1970年頃より、食品分野においてコーヒー豆からのカフェイン抽出、ホップエキス、フレーバーなどの抽出を対象に工業利用されてきました。最近では、機能性食品素材を対象とした安全・安心な抽出溶媒としての期待が高まっていますが、その他にも様々な分野で適用され、使用される超臨界流体技術も多様化しています。

超臨界二酸化炭素抽出

超臨界二酸化炭素抽出分離は、超臨界二酸化炭素を溶媒として使用し、固体、あるいは液体から目的物質(成分)を分離する抽出分離法であり、最近では天然志向、脱有機溶媒プロセス、環境負荷低減プロセスの観点から注目されています。

固体からの抽出に用いる実験装置の例

適当な大きさに調整した試料を抽出容器に充填し、必要圧に昇圧したCO2を所定速度で容器内に流通させ、次いで減圧して抽出物を回収します。
固体からの抽出に用いる実験装置の例

液体からの多成分分離抽出に用いる向流抽出装置の例

超臨界流体(特に高圧流体)により抽出した液体等多成分系液体を抽出塔上部から供給し、超臨界二酸化炭素を抽出塔下部から供給し、これらを向流接触させることで、溶解度の違いにより目的成分を分離抽出します。
液体からの多成分分離抽出に用いる向流抽出装置の例

本例は、米糠から高圧抽出した液体を分離する際の事例を示しています。

有機溶媒の代替として注目される超臨界二酸化炭素

従来の有機溶媒等による抽出法に対して、超臨界二酸化炭素抽出は煩雑な溶媒除去操作が不要であり、製品歩留の低下や製品品質劣化等を回避できる可能性があります。また近年製品への残留溶媒が課題となっており、脱有機溶媒への取り組みとしても可能性が期待されています。安全、安心な溶媒としてこれまでは食品や医薬品分野を中心に工業的利用がなされていましたが、超臨界二酸化炭素のメリットを生かし、化学分野や香粧品分野など様々な分野での活用が期待されます。

有機溶媒のデメリット

  • 臭いがきつい
  • 製品中の残存リスク
  • 引火爆発事故のリスク
  • 高温操作による製品の劣化
  • 溶剤除去時のエネルギー
  • 廃液・環境問題

超臨界CO2のメリット

  • 無味無臭
  • 万一残留しても毒性を考慮しなくてよい
  • 不活性ガスなので火災の心配がない
  • 常温分離で製品劣化の心配がない
  • 常温常圧に戻せばCO2除去は極めて容易
  • 工場から出るCO2を有効活用

安全・安心で環境負荷の少ない操作が可能に!!

グリーン溶媒抽出の応用と展開

天然物に含まれる機能性素材は、疎水性物質、親水性物質が混在しており、これらを抽出するには適切な溶媒選定が必要です。従来の抽出技術では、疎水性物質の抽出および親水性物質の抽出それぞれに、残留溶媒の処理、工程の煩雑さなどの問題を抱えています。グリーン溶媒として超臨界流体を用いる抽出技術では、疎水性物質である、テルペノイドやトリグリセリド(油脂)が超臨界二酸化炭素によって抽出されます。また、エントレーナー(共溶媒)を使用し、やや極性を有するフラボノイドやアルカロイドなどの抽出を行います。タンパク質などの親水性物質は、高温高圧水ないしは亜臨界水によって処理します。

従来の抽出技術と問題点

従来の抽出技術と問題点

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